融資成功ノウハウ
①資金繰りが苦しいので金融機関からの借入れを何としても受けたいが、メインバンクで断られたのでどうしたらいいかわからない。
②決算が間近だが、どう決算書をまとめれば融資を受けやすくなるのかわからない。
③金融機関から「業績は良い」と言われたのに、実際に審査を受けてみるとダメなことが多い。
④信用保証協会で何年も前に事故を起こしたが融資を受けたい。
⑤決算内容がどう見ても悪いのだが、それでも日本政策金融公庫(こっきん)と信用保証協会で融資を受けたい。
大阪府内にある住宅リフォームをメインとする工事業 年商8千万円
ホームページを見ていただいてお問い合わせあった会社です。
数ある資金調達コンサルタントと名前が付くところを3社回られたが、
相談料が高いわりには、回答が当たり前のことばかりということで、
ホームページで相談できるところをかなり探されたらしいです。
コンサルティング会社より税理士事務所で融資に強いところを
だいぶ探されて当社に問い合わされたとのこと。社長の年齢は46歳。
「創業者である父親から譲り受けて約7年、必死でやってきたが、
単価の低下と材料の高騰でにっちもさっちもいかなくなり、いろんなところを
削減した結果、遂にリストラ対象を人にすることに最近踏み切ったばかり」
とのこと。
当社 「資金はどれくらいがご希望なんですか?」
近藤社長 「3千万円です」
当社「う~ん、決算書を見ると年商が8千万円ですね。通常の運転資金なら、金融機関は月商の2ヶ月をまず基準にみるのですが、3千万円となると5ヶ月分にもなりますね。そういう意味では、多いなぁ、とは思いますね。決算書をみても、流動比率(資金繰り的にどれくらい余裕があるかを表す分析値)や自己資本比率(経営体質が安定しているかを表す分析値)はまずまずなので、経営体質的には良好だと見られるはずですのでそれはそれで良いのですが。でもやっぱり融資希望額が多い。もう少し減らせないですか?」
近藤社長「う~ん、2ヶ月分となると、1300万円程度ですか。それだけだと、いざという時の余裕が。」
運転資金がなぜそんなに必要なのか探るために、会社の状況をじっくり聞かせていただきました。1時間くらいして出てきた話が以下です。
「今までスタッフ全員正社員だけでやってきましたが、先行きを考えて、最近、泣く泣く長年やってくれていた2人のリストラを断行しました。固定経費はだいぶ減ったのですが、でも今度は、正社員が減った分、受注が多い時には外注業者に頼らないといけなくなり、その外注業者への支払から売上入金のタイミングまで5ヶ月もあるのです。」
当社「なるほど。それはそれで立派な借入理由になりますね。」
近藤社長「えっ?そうなんですか?」
いったい何を驚いているのか一瞬わからなかったのですが、その肝心なことを融資係に説明せず、「資金繰りが苦しい」「運転資金がほしい」しか言わず、理由が十分伝わっていないことがわかりました。
当社「どうしてそれを銀行に言わないんですか?」
近藤社長「いやぁ、材料の高騰で運転資金が欲しい、っていうことはだいぶ言ったのですが・・・」
この会社は現在の借入が既に3500万円あるので、売上に対する借入率は決して低くはない。なので、普通に「運転資金がほしい」 だけを訴えると 「借入の返済原資を作るための借入では?」なんて疑われてしまいます。
「外注費が先に出て行くからつなぎの資金がほしい」というのは、いわば「前向き」な資金なので堂々と言ったらいいことなのです。
さらに突っ込んで、業界の動向や最近の取引先の状況を聞いてみると、元請の得意先から 「今までは建材をこちらから支給していたが、これからはそっちで仕入れた上で現場に持ち込んでくれないか?」 という要望もちらほらあることがわかりました。得意先はその方が資金繰り的に楽だからです。
当社「実際にその要望を受け入れるおつもりはないんですか?」
近藤社長「いやぁ、その条件を飲めば売上は飛躍的に伸びるので、出来るならそのやり方でいきたいけど、先立つものが・・・」
当社「だったらそのための資金も必要ということも併せて言えばいいじゃないですか。実際にそれをしたいんでしょ?実際それをしたら受注がドカッと入ってくるのは間違いないんでしょ?」
近藤社長「ええ、そういう要望は連日ありますから。実際まとまった借り入れが出来たら間違いなく発注はかなり出てきます」
どうも、こういった理由を金融機関に言うなんてとんでもなくムシのいい話だ、と勝手に思い込んで諦めていたようです。長年真面目にやってこられた社長ほどそういう傾向は強いのですが。実際はこういった理由は利益を上げるための前向きな資金なのでほとんどの金融機関はちゃんと聞いてくれるにもかかわらず、です。
さらに、ふと目についたことが。決算書を見ると売掛金が4か月分もの残高があるのです。「う~ん、まさか売上の水増しなんてしまてませんよね?売掛金が4ヶ月分もたまっていますが。」
近藤社長「ああ、これは私のところの得意先がそういうところが多いんですよ」
よくよく聞いてみると売上を手形で回収する比率は少ないにもかかわらず、4ヶ月という回収サイトが平均らしいのです。
当社 「その業界の中でも長いサイトのことを融資担当者に説明しましたか?」
近藤社長「いいえ、特には」
当社「銀行は業界特有の数値データを必ず持っています。それと照らし合わせて考えます。御社のようなリフォーム工事業だけの業界の平均値も持っておられます。なので、他のリフォーム業とは全然ルールが違うんだ、ということであれば、それはこちらから言わないと。
その業界の平均値で見られてしまって「サイトが長過ぎて不健全」という単純な見られ方をしている可能性が大きいです。
だからその前に、ご自身の独特の事情をきっちり説明しないといけません」
近藤社長「えっ?そういうものなんですか?」
結局・・・・
再度金融機関に行って借入のための前向きな理由を強調して、さらに、融資を受けたらどう業績が好転して返済もきっちりできるか、ということを書類にきっちり書き込むことをご指導しました。さらに、業界の特性とこの会社の特性もきっちり書き込むことをやった結果、近藤社長はこちらがご指導したとおりに融資係にアプローチした結果、見事満額融資を受けることができました。
ポイント
■借入できるか出来ないかは先入観で判断してはいけない。
■借入理由は前向きな理由が好ましい。
たとえば・・・
・受注見込みはあるのだが外注費が先に出ていく
・販促ノウハウには自信があるので販促費を積極的に
使っていきたい
などなど
■業界特有の数値があるならそれをきっちり書面でも口頭でも説明する。
自社独自の慣習・ルールがあるなら、それもきっちり説明する。
大阪府内のリフォーム工事業 個人事業 年商3千万円
これは、当社と顧問契約を結んでくださっている、あるリフォーム工事業の事業主の方の話です。
この事業主さんは、決算書(確定申告書)の数字が芳しくないにもかかわらず、追加融資を引き出すことに成功しました。
もともとの借入が、某金融機関から約1,000万円。さらに経理上の数字を見ていると、「来年のこの時期あたりに資金繰りが苦しくなりそうだ」ということが判明。さらに融資をお願いしないといけない。これが追加融資ですね。
通常、決算書(確定申告書)の内容が良くないと追加融資は難しいものです。
にもかかわらず、この事業主さんが見事にやってのけたコツは、「銀行とうまく付き合う = 融資担当者を味方にする」ことだったのです。
まず私どもが最初にご提案したのは「現在借入している金融機関で積立定期をつくる」ということでした。
自動引き落としにしてはいけません。また毎月ATMから入金するのは意味がない。
1カ月に1回、自分の足でその支店に出向いて窓口で入金し、その”ついで”に
「あっ、すいません、融資の○○さんいらっしゃいますか」と窓口職員に声をかけ、○○さんを呼び出してもらう。
大切なのは、定期的に融資の担当者と顔を合わせること。積立定期は、いわば、その支店を定期的に訪れる言い訳のようなものです。
私どもは毎月、そのメーカーさんの経理報告書類を作ります。別に作成している長期的な資金繰計画書や事業計画書と、実際のこの1ケ月の数字とどれくらいの開きがあるか、そして、それはどんな要因によるものなのかという分析がついています。
その報告書類一式が、融資担当者へのおみやげになります。
ここの社長さんは書類を担当者に見せながら、自分の事業所が今どのような状態であるかを説明するわけです。「待ってください、自分んちの財務状況を全部オープンにしてしまったら、銀行に全部もっていかれてしまいますよ。だってその銀行から借入しているんでしょう」。という声が聞こえてきそうです。実際、その社長さんも最初のうちは、かなり渋っておられました。
でも、よく考えてみましょう。「どうも追加融資をしてもらわないといけなくなりそう」ということが、今、この時点でわかっているのです。で、そのときにはどうせ、すべての資料を提出しなければならない。出せと言われてから渋々出すより、こちらから進んで出す方が、出す方も出される方も気分がいい。
「気分がいい」というのは甚だアイマイな利点ですが、実際に借入をした方ならおわかりでしょうけれど、実はかなり嬉しいファクターです。もちろん融資担当者の心証も変わってきますしね。それに、普段から財務内容を知らされていれば、融資担当者も、「来年あたり追加融資の話を持ってこられそうだ」というのがだいたい想像できる。
で、「いざ融資」という段になるまで、その担当者もいろんな方策を考える時間があるわけです。たとえば「現状から見ると追加融資額はこれくらい要求されそうだけど、それなら現在の借り入れの返済額を2ヶ月だけ滅額して、そしたら決算は乗り切れるから、追加融資額はこれくらいに減らせるかも」といった感じの算段です。
1000万円の追加融資のつもりだったのが、やり繰りのしようによっては、600万円くらいで済むかもしれない。
「でもね、融資担当者だって忙しいんでしょ?毎月毎月、借金のある零細企業の話なんて聞いてくれますかねぇ~?」。たしかにそういう不安もおありでしょう。
このケースの社長さんも当初、かなり行きづらいとおっしやていました。
でも、2回・3回と通ううち(2ケ月後・3ケ月後ということですね)、担当者の方も「あ、まただ」とわかるようになったのか、快く迎えてくれるようになり、世間話をするまでになったのだとか。
私の知り合いの金融機関の職員に聞くと、毎月のように報告書を持って来られると、担当者は「とっても助かる」。自分からわざわざ情報収集する必要もないし、話をしながらそのお客様の企業が抱える別の良い点・悪い点が見えてくる。
第一、毎月自分を訪れて報告しに来てくれる人って、それだけでも印象が良くなりますよね。融資担当者だって人の子。悪く思わない相手に、悪くしようなんて思わない。
さて、最初にお話しした通り、このメーカーさんは、決算書(確定申告書)の内容があまり良くなかったのにもかかわらず、運転資金のための追加融資を引き出してしまいました。まず、心証が良かった。
そして、決算書(確定申告書)には出てこないこの事業所の強みを、月に1度のコミュニケーションでしっかりアピールできていた。そして毎月の積立定期も「実績」となった。積立の金額から、「この事業所にはこれくらいの返済能力がありそう」という計算は、融資係なら誰でも瞬時にしますからね。
結論【金融機関は、あなたの味方】
隠そうとするからアヤシゲに見える。ほじくりかえしたくなる。だったら、自分からどんどん情報公開しましょう。金融機関は、お客様の事業所が発展してこそ自分たちも存続できるのだから、お客様が倒産しないようにいろんな知恵を絞ってくれます。ただ、普段から仲良くしておかないと。その第一歩が、積立定期です。
■借入のために絶対的に必要なものはなんといっても試算表です。現在、金融機関は、独自の金融検査マニュアルを元に、貸出先に自己査定を行っています。
■経営者側にしてみれば「借りたい」、金融機関側は「貸したい」というのが本音ですから貸し渋りなどおこるはずはないのです。ところが現実は逆です。貸し渋りがあたり前のように行われています。経営者の方からすると「勝手な判断するな!」と言いたくなるでしょう。
■しかしさきほど述べたように金融機関のホンネは貸したいのです。借入を申し込みにくる経営者の方の準備が少しだけ足りないだけなのです。
■金融機関はあなたの会社の事業計画や月々の業績管理を判断の材料としています。そこで試算表は絶大な威力を発揮します。試算表は経営者の方に自分の会社の状態を認識してもらい、アピールポイントを把握してもらいます。貸したい金融機関に対してアピールポイントさえ間違なければ資金調達は難しくはないのです。